研究概要 |
本研究では,人間の高度な技能を分析し,伝承するための方法を一般化することを目的としている.本年度は主たる対象を伝統工芸品に置き以下の手法を開発した. (1)動作の空間的動きから見た技能の分析と定量化手法の開発:人間の動作,使用用具,対象物の動きを定量化するために,3次元磁気センサーにより3次元位置,3軸回転角度をそれぞれについて測定する.そして,作業の種類を区分し,人間の身体の動き,使用用具の動き,対象物の動きをモデル化する手法を提案した.この手法を用いて,岡山県の伝統工芸品である備中神楽面の製作過程における技能者の彫る動作を定量的に分析した. (2)手先の軌跡を教示するための動作補助具の開発:技能者の手先の軌跡を習得するための動作補助具を開発した.動作補助具は6軸で構成され,手先の3次元位置,方向の取得および教示が可能である.この装置は力覚を発生できる機能を有する.この機能を用いて手先をそえた道具を移動させ,教示できる.本装置を評価するために,大きさと形状が異なる図形および文字を描くペンの軌跡を時系列データとして記録し,それを被験者に教示させ,習得された軌跡を分析した. (3)手術における運針技能向上のための運針速度調整法:外科医の運針技能を向上させるために針先軌道を変化させずに,運針速度を調整することによって運針精度を高める方法を提案した.そして,代表的な3つの運針動作についてロボットを用いて動作を再現して運針精度を評価した.
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