研究概要 |
富士山北東麓に位置する山中湖においてボーリング掘削により湖底堆積物を採取し,その中に挟まれる火山噴出物(テフラ)の層序を基に,過去数万年にわたる富士山の火山活動史および山中湖周辺陸上域に堆積したテフラの調査・解析と併せて噴火史を解明すること目的に研究を行った.また,火山災害実績図やハザードマップを作成する上での基礎資料を得ることや微化石分析を行い,噴火活動の影響を明らかにすることを併せて目的としている. 今年度は火山噴火の影響を明らかにするために,山中湖湖心において採取した湖底堆積物(YA-1コア)を用いて,珪藻・花粉化石と植物珪酸体等の分析を行った.珪藻化石の分析結果から,深度2.5m以浅では浮遊性珪藻が優勢で湖的な環境を示し,深度2.5〜6.0mは付着性や底性の珪藻がおおく,沼沢性ないし極浅い湖的な環境となる.深度6.0〜9.2mまでは再び浮遊性のものが多くなる.深度9.2〜11.4mでは付着性や底性の珪藻がおおく,沼沢性から河川の影響が読みたれた.花粉化石分析の結果から,山中湖周辺の地域花粉帯は深度11.4m以浅では深度2.5mを境に上からI帯とII帯に分帯される.I帯は木本ではマツ属が優勢で,草本もイネ科やヨモギ属などがみられる.II帯はスギ属が顕著な増加を示し,草本は深度2.5〜9.2mではほとんど産出しないことが判明した.また,深度11.4mでは木本や草本花粉はほとんど産出しないが,ススキ属・タケ亜科やヨシ属の植物珪酸体が産出する.花粉分析の結果から,木本類に対する降下スコリアなどの火山噴出物の顕著な影響は読み取れなかったが,詳細な分析を引き続いて行っている. 付着性および底性珪藻化石が増加し,花粉化石とくに草本類のものがみられない層準は降下スコリア等のテフラが多数挟在し,その間の堆積物も上下に比べると粗粒シルトや極細粒砂分が多くなる.このことから,テフラの噴出により林床植物や草原性植物は影響を受け,裸地が広がり,浸食が大きくなったものと推定される.
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