研究概要 |
本研究は火山災害実績図や防災マップを作成する上での基礎資料を得るために,富士山北東麓に位置する山中湖ボーリング掘削で採取した湖底堆積物(YA-1,2コア)のテフラ層序を基に,過去数万年にわたる富士山の火山活動史・噴火史を,また併せて,微化石分析を行い,噴火活動の影響を解明することを目的とした. 今年度は研究の総括と追加の微化石分析およびテフラ・粒度分析等を行った.山中湖コアYA-1・2中のテフラについて記載岩石学的および岩石化学的分析を行い,その特徴を明らかにし,陸上部に分布するテフラとの比較を行った.その結果,陸上部のテフラと概ね対応がついたが,一部未確認のテフラがあることが明らかになった.広域火山灰として,YA-1コア深度約7.4mとYA-2コア深度約6mで伊豆カワゴ平テフラに,YA-1コア深度約11.8mで鬼界アカホヤテフラに対比可能なテフラを見出した.また,炭素14年代として,YA-1コア深度3.4mで1,535年前(暦年補正値,以下同),深度11.5mで約7,015年前,深度14.4mで約12,000年前,またYA-2コアでは深度約13mで約8,500年前の年代を得た. 火山噴火の影響を明らかにするために,山中湖湖心において採取した湖底堆積物(YA-1コア)を用いて,花粉化石と植物珪酸体等の微化石分析を行った.花粉分析の結果から,木本類への火山噴火の顕著な影響は読み取れなかったが,草本類花粉化石や胞子がみられない層準は降下スコリア等のテフラが多数挟在し,その間の堆積物も上下に比べると粗粒シルトや極細粒砂分が多くなることから,テフラの噴出により林床植物や草原性植物は影響を受け,裸地が広がり,浸食が大きくなったものと推定される. 本研究により,富士山北東麓における富士火山の過去数万年にわたるテフラ層序が明らかになり,微化石分析により火山噴火の影響を評価することができた.これらの成果は火山災害実績図の作成等防災上の基礎資料として貢献するものと考える.
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