研究概要 |
超短パルスレーザーを用いて固体からプラズマ状態までの遷移過程を調べる研究は、本年度で単色の光波長については計測システムが完成し、プラズマの膨張に断熱過程を仮定したMaxwell伝播方程式を解くシミュレーションコードの助けを経て、プラズマパラメータを決定できる手法が確立された。これをもとに、いくつかの新しい知見が得られることになった。 まず、いわゆる良導体であるAuは、常温状態での赤外光に対するAC導電率の特性が、その絶対値、周波数依存性ともに古典的なDrudeモデルにより説明できる物質である。これが、高温化され、沸点を超える程度になり、膨張が始まると急激に導電率の減少が起こることが観測された。その状態では、本来分極の主体と考えられていた自由(伝導)電子による成分よりは原子分極による効果の方が主となっていることがわかった。このとき、Drudeモデルの減少比は1/100以下であり、予想された自由電子密度では全く説明できないことがわかった。一方、この結果を米国リバモア研究所、S.Libby博士、サンディア研究所M.Desjarlais博士、フランスCEA研究所G.Faussurier博士らと検討した結果、固体の金属-絶縁体遷移で起きている局所化が原因というプラズマでは新しい概念が出てきた。これには、サンディア研のZピンチ、CEAのプラズマセル装置による実験データ、また量子論的な分子動力学シミュレーションの結果を合わせ、議論が行われた。 この議論により種々の金属についてのさらなるデータを修得し、さらに、周波数依存性を我々が測定することになった。一方、W, Moなどのいわゆる常温で高抵抗-高融点金属に対しては、常温では赤外光の周波数で誘電体的な複素誘電率を持つが、加熱初期に誘電体-金属的な遷移が起き、その後膨張をしていることが明らかになった。 これまでに、Au, Cu, Mo, W, Al, SiO_2,Stainless Steelなどが調べられ、これらデータはレーザー加工、などの理解に貢献するとともに、warm dense plasmaでの物性モデル構築に精度の高いデータを提供しつつある。
|