研究概要 |
レーザー分光法を利用したプラズマ中の電場計測は,プラズマに非接触で時空間分解に優れた測定が行なえる利点をもつが,従来の方法で得られる計測感度は800V/cm程度に限られ,材料プロセスプラズマにおける材料-プラズマ界面のシース電場構造を計測するには感度が不十分であるという問題点を持っていた。本研究は,数年前に水素について実現されたレーザー誘起減光分光法を汎用性のあるArに適用し,Ar添加負性プラズマのシース電場構造を高精度で計測することを目的としている。レーザー誘起減光分光法を用いると10V/cm未満という従来に比べて桁違いの高感度が得られ,これまで未解明である負性プラズマ(材料プロセスで多用される)のシース電場構造を明らかにできるものと期待できる。Arに対してレーザー誘起減光分光法を適用する場合,Ar高励起状態(主量子数40以上)のシュタルクスペクトルを理論的に計算することが極めて困難であることが最大の問題である。本年度は,無プラズマの空間に既知電場を設定し,そこにリモートプラズマ源で得られる準安定状態Arを輸送する方法で,既知電場に対するAr高励起状態のシュタルクスペクトルを実測した。これにより,プラズマ中で得られるシュタルクスペクトルから未知電場を決定するためのデータベース整備することができた。この結果を元に,Arプラズマ中に設置した平板電極前面の電場の空間分布を超高感度(最高感度6V/cm)で計測することに成功した。超高感度測定が可能になったために,従来未解明であるプレシース領域の電場構造に関する信頼性のあるデータが初めて得られ,流体理論で得られる電場構造と比較検討することができた。現在は,本研究の最終目的である負性プラズマのシース電場構造計測のため,ArにSF-6を添加したプラズマで実験を行なっており,有意なデータが得られつつある。
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