研究概要 |
レーザー分光法を利用したプラズマ中の電場計測は,プラズマに非接触で時空間分解に優れた測定が行なえる利点をもつが,従来の方法で得られる計測感度は800V/cm程度に限られ,材料プロセスプラズマにおける材料-プラズマ界面のシース電場構造を計測するには感度が不十分であった。本研究は,数年前に水素について実現されたレーザー誘遺光分光法を汎用性のあるArに適用し,Ar添加負性プラズマのシース電場構造を計測することを目的としている。今度は,本研究計画の最終目的である電気的負性プラズマのシース電界構造の測定を行った。電気的負性プラズマは,誘導結合アルゴンプラズマにSF_6を添加することにより生成し・電子密度に対する負イオン密度の割合n_-/n_eが30未満の範囲でシース電界分布測定を行った。シースは,プラズマ中に平板電極を挿入し,その電位をプラズマに対して-43Vに設定することにより形成した。実験の結果,電気的負性プラズマのシース電界は2段階のステップ状構造を持つことが初めて見出された。電極から遠く離れた領域では10V/cm未満で一様な電界が観測されたが,これはイオンの無秩序運動に起因するマイクロ電界が観測されたものであると解釈された。電極から3mm程度の位置で,電界は10V/cmから100V/cmへと極めて急峻に増加した。これは,プレシース中での僅かな電界によりプラズマ中の負イオンが反射され,正の空間電荷層が局所的に形成されたためと考えられる。電極から0.5mm-3mmの領域では電界は100V/cm程度のほぼ一定値を示した。これは,この領域のイオン流体速度が,荷電粒子が電子と正イオンのみから構成されるこの領域のボーム速度より遅いために,荷電分離が解消されたためと解釈できる。電極表面から0.5mmまでの領域で電界は再び急峻に増加したが,この領域では電気的正性プラズマの場合と同様な正イオンシースが形成されていると考えられる。
|