研究概要 |
プラズマを利用した材料プロセスでは、H, C, N, O等の軽元素やハロゲン等の原子状ラジカルが、気相や固体表面における化学反応に大きな係わりをもっている。本研究では、200nm以下の真空紫外領域で波長可変なレーザ光源を用いた吸収法を開発し、様々な原料ガスのプラズマ中で、それらの定量的な計測を進めている。 真空紫外域のレーザ発生は、XeやKr等の希ガスを非線形媒質として用いた2光子共鳴4波混合過程によって行なってきているが、今年度は、色素レーザの励起に従来用いていたエキシマレーザを新規に購入した高出力Nd : YAGレーザに置き換えることによって、より安定なレーザ発生に成功し、84nm〜170nmのほぼ全領域をカバーできることを確認した。次に、そのレーザを用いて、85nm及び166nm付近の波長でC原子の計測を試み、各種のフロロカーボンガスや炭化水素ガス、並びにCOガスの誘導結合プラズマ中でのC原子の絶対密度の測定に成功した。得られた密度は10^<10>〜10^<11> cm^<-3>の範囲で、以前に測定したF原子の密度に比べて1桁以上小さい値であった。さらに、波長を130nm付近に設定してO原子の計測を試み、COやO_2ガスのプラズマ中での定量測定に成功した。C原子の場合と同等のプラズマ生成表件におけるO原子密度は10^<12>〜10^<13>cm^<-3>に達した。パルス放電アフターグローでの寿命測定から、その原因がO原子の表面での再結合や反応の速度が比較的遅いことに帰着できることがわかった。 一方、プラズマ中での電子衝突による原子状ラジカルの生成過程について、量子化学計算を用いて電子励起、電子付着やそれに続く解離過程のしきいエネルギの推定を行ない、プラズマ中の電子エネルギ分布関数と生成レートの関係を定量的に評価して、プラズマ生成条件の最適化をはかるための基礎データの蓄積を進めている。
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