研究概要 |
核融合炉の第一壁及びブランケット構造材料の候補材料であるバナジウム合金(V-4Cr-4Ti)は、水素を良く吸収して水素脆化を起こすことが指摘されている。昨年度は、V-4Cr-4T合金の水素ガスの溶解度を系統的に調べ、V合金の使角条件が高温(>400℃)で低圧(<1Pa)でかつ純度が高ければ水素ガス吸収による脆化は起きないことを明らかにした低温領域では脆化が起きるため、チタン酸化膜を被覆することによって水素吸収を抑制できること(≦300℃)を明らかにした。本年度は、V合金の使用範囲を拡大するために、第一壁やブランケットで起きる水素同位体のイオンや荷電交換した高速の中性粒子がV合金中に注入された場合を模試して、重水素イオンの照射による保持特性を明らかにした。 1.7keVのD^+イオンを,100、300℃(ITERの壁温度)、500℃(V合金製のブランケット運転温度)で照射量を変えてその保持特性を調べた。100℃で照射すると、重水素の保持量は照射量と共に増加し飽和しなかった。その保持量は、プラズマ対向材料である黒鉛の1桁以上、タングステンの2桁以上多かった。これは高い照射量では、V合金表面に偏析したチタン酸化層が重水素イオンによって除去され、重水素ガスの拡散障壁の機能が消失し、雰囲気の重水素ガスを吸収したためである。照射温度を増加させると重水素保持量は指数関数的に減少した。特に、ブランケット運転温度の500℃では、重水素量は100℃に比べて1桁少なく、照射量とともに飽和傾向を示した。イオンのみによる保持量は約5wppmであり、重水素ガスによる吸収量を含めても水素脆化は起きないことが分かった。 V合金は燃料水素雰囲気では高温でも還元されないが、水素同位体イオンの照射によって、表面近傍の酸化物が除去されると、イオン照射による保持量もガス吸収速度も大きく変わることが明らかになった。
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