研究概要 |
平成15年度は,まず昨年度までに完成した低エネルギー陽子ビーム発生用200kV加速器からのパルスビームを既存のプラズマ標的まで効率良く輸送するためのビームラインを建設し,既存の分析電磁石にビームを入射してビームラインに損失なく合流させることに成功した.しかしコロナ放電のため150kV以上の電圧を印加できず,ビームエネルギーは150keVに制限された. 以上の準備の後,ビームとプラズマの相互作用実験を試みたが,シングルショットのパルスビームであるためにビーム位置モニター用蛍光板の発光強度が弱く,プラズマ標的上のビーム位置と集束の状況を正しく把握できなかった.このためプラズマ標的の中心にビームを通過させることが困難であった.さらにマイクロチャンネルプレートを用いた時間検出器の不調のため,代用としてプラスチックシンチレーターと光電子倍増管からなる時間検出器を作成した.しかし時間分解能は8ns程度にとどまり,パルスの繰り返し周期と同程度となったため,十分な精度で飛行時間法によるエネルギー損失測定ができなかった.これらの理由により,予定していたクーロン対数,すなわち低エネルギー陽子ビームの阻止能測定は現在も進行中である. 一方,これらの実験と平行して,プラズマ中のイオン・電子と入射粒子のクーロン相互作用を直接計算する粒子コードを開発して陽子阻止能の計算を行った.この結果を,近接・遠隔衝突モデルを統合して得られる100keV/uの低速領域で有効なクーロン対数の表式による解析的計算結果と比較したところ,比較的良い一致が得られた.
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