電子機器の小型軽量化やエネルギー貯蔵問題に対する有効な解決法として、小型大容量の二次電池の開発が盛んになっている。主なターゲットはリチウム二次電池であるが、現在実用に供されているものの、高性能化、低コスト化、安全性等の課題でさらなる改良進歩が必要である。バナジウム系酸化物は、充放電サイクル特性、コスト、低毒性あるいは資源的な面に優れた特長を有する。バナジウムコバルト系酸化物CoV308は、特異なトンネル構造を結晶内に持ち、リチウムイオンの挿入脱離に有利と考えられる。CoV308を固相法を用いて合成し、得られた試料の結晶構造をリートベルト法により精密に解析した。合成したCoV308はトンネル構造を結晶内に持つことを確認した。リチウムイオン二次電池正極活物質としてのリチウムイオン挿入脱離挙動を調べた。1サイクル目の放電時には2.3V、2.05V、1.9V付近に3つのプラトーが観測され、反応が3段階で進行したが、充電時には3V付近のプラトー1段階で反応が進行した。1サイクル目の放電によりLixCoV308と表したときのx=2.6までリチウムが挿入され約180mAh/gの容量を示した。1サイクル目の充電時にはx=0.6までリチウムが脱離した。2サイクル目以降、ほぼ同じ容量のリチウムの挿入と脱離を繰り返した。リチウムイオンがCoV308に可逆的に挿入脱離することが示され、良好なサイクル特性を示した。CoV308は電流密度によらずリチウム二次電池のおける良好な充放電サイクル特性を示した。高性能なリチウム電池正極材料として期待される。
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