研究概要 |
本研究の目的は、生体高分子の分子認識機能を模倣した金属イオン認識システムを用いて、高レベル廃液に含まれるマイナーアクチニド元素(MA)の核変換処理において必要とされるMA群分離技術を構築することである。MA元素のうちAmやCmのようなソフト性の金属イオンに対して、ピリジン/トリアジン構造体(BTP : 2, 6-di(vinyl-benzyl-1, 2, 4-triazol-5-yl)pyridine)あるいはTPEN (N, N, N', N'-tertakis (2-pyridyl-methy)ethylenediamine)のような相互作用部位をもつ「感温性高分子ゲル」の体積相転移現象を利用して、相互作用部位の位置的、構造的変化によって錯形成能を制御し、ソフト性金属イオンの高選択的抽出を行う。本年度は(1)TPEN及びBTPモノマーの合成、(2)これらモノマーを導入したゲルの合成、(3)ソフト金属(Cdで代用)に対する抽出試験を行った。以下に研究結果を示す。 1.BTP及びTPENを合成し、各種機器分析によって合成ができていることを確認した。 2.TPENに対するソフト金属(Cd(II))に対する抽出能を調べた。TPENはCdに対して高い錯体形能を有し、錯体形成の安定尾度定数は10^<13>以上であった。ソフト金属に対する高いイオン認識能を有する。 3.BTPと感温性ポリマーであるNIPAを共重合させた。ゲルは感温性を示し、相転移温度は304Kであった。304K以下では膨潤し、304K以上では収縮した。Cd(II)の抽出容量は膨潤状態よりも収縮状態で大きな値を示した。 4.BTP-NIPAゲルのCd(II)抽出機構はCd(BTP)^<2+>の配位錯体形成とその硝酸塩錯体の形成からなり収縮状態におけるCd(BTP)^<2+>形成の抽出定数は膨潤状態における値の約2.5倍であった。高分子構造中の配位子(N-donor)の配置を変化することによって金属イオンの抽出能を制御することは原理的に可能である。 5.BTP-NIPAゲルによるCd/Zn分離試験の結果、分離係数は10程度と大きな値は得られなかった。ソフト金属の選択性向上にはTPENのような多くの配位座を有するモノマーの導入が必要である。
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