バイオミメティックゲルを用いたマイナーアクチニド元素分離プロセス

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13480144
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 竹下 健二 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教授 (80282870)
• 研究分担者: 館盛 勝一 日本原子力研究所, 物質科学部, 部長 ; 清田 佳美 財団法人 産業創造研究所, 化学研究部, 主任研究員 ; 小川 光輝 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助手 (10343162)
• キーワード: 高分子ゲル / 体制相転移現象 / 生体模倣化学 / 放射性廃棄物 / アメリシウム / 核変換処理

研究概要

本研究では再処理廃液からのAm抽出を目的として感温性の生体模倣ゲルを合成し、その抽出性能を明らかにすることである。本研究の結果、以下のような結論が得られた。
(1)生体模倣ゲルとして、複数の窒素ドナーをもったBTP(架橋剤)と感温性モノマーNIPAを共重合ゲルを合成した。親疎水性の異なるBTPとNPAの共重合体合成のために新規「超音波重合法」を提案した。本重合技術によって均質な共重合ゲルの合成が可能となった。
(2)Cd抽出試験の結果、NIPA-BTPゲルは相転移温度より高温(ゲル収縮状態)で金属イオンを抽出し、相転移温度より低温(ゲル膨潤状態)で金属イオンを放出した。超音波重合法で合成した均質ゲルを用いることで温度スイング操作による金属イオンを効率的に抽出・放出が可能になった。しかしながら、BTPの含有量を増加するとBTPの一部はNIPA高分子鎖のブランチを形成した。BTPブランチに配位した金属イオンはゲルの収縮から膨潤への体積相転移によって完全に放出できないために、温度スイング操作によって金属イオンの抽出・放出を完全には制御できなかった。今後の研究課題として、ブランチ形成を抑制できる重合技術の開発が挙げられる。
(3)合成されたNIPA-BTPゲルを用いてAm抽出実験を行った結果、NIPA-BTPゲルにAmは低温(室温以下)抽出され、高温(40℃程度)で脱離された。合成されたBTP-NIPAゲルがAm捕集剤として有効であることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] K.Takeshita, M.Tanaka, Y.Nakano: "Extraction of Cd(II) from Aqueous Nitrate Solution by Thermosensitive Gel crosslinked with 2,6-di(3-vinylbenzyl-1,2,4-triazol-5-yl)pyridme (BTP)"Solvent Extraction and Jon Exchange. 20[1]. 139-150 (2002)
• [文献書誌] K.Takeshita, M.Tanaka, Y.Nakano, Y.Seida: "Extraction and Recovety of Cd(II) in Aqueous Nitrate Solution by Thermosensitive Polymer Gel using Nitrogen-donor Ligands as Crosslinker"J. Chem. Ind. Eng. (China). 53(suppl.). 228-230 (2002)
• [文献書誌] K.Takeshita, K.Watanabe, Y.Nakano, M.Watanabe: "Extraction of Cd(II) and Zn(II) with Dialkylthiophosphinic Acid and Hexadentate Nitrogen-donor Ligand"Chemistry Letteters. 32(1). 96-97 (2003)
• [文献書誌] M.Watanabe, R.Mirvaliev, S.Tachimori, K.Takeshita, Y.Nakano, K.Morikawa, R.Mori: "Separation of Americium(III) from Lanthanide by Encapsulating Hexadentate-ligand"Chemistry Letteters. 2002[12]. 1230-1231 (2002)
• [文献書誌] K.Takeshita, M.Tanaka, Y.Nakano: "Extraction and Recovery of Cd(II) with Thermosensitive Gel Crosslinked with Nitrogen-donor Ligands"Journal of Chemical EngineeringJapan. (in press). (2003)
• [文献書誌] M.Seida, K.Takeshita, Y.Nakano: "Phase behavior of N-isopropylacrylamide-acrylic acid copolymer Hydrogel prepared with ultrasound"Applied Polymer Science. (in press). (2003)