研究概要 |
(1)DEPによる繁殖機能障害に関する研究 C57BL/6N雌マウスに対してディーゼル排気ガス中の粒子濃度が0.3、1.0および3.0mg/m^3の3群と対照群(清浄空気のみ)を設け,約4ヶ月間にわたって吸入暴露させた。その結果、母マウスの流産や娩出不全等の繁殖異常は曝露群と対照群との間に有意差は認められなかった。しかし、雌雄ともに高濃度曝露群で有意に減少した。雄子マウスでは生殖突起肛門間距離(AGD)の有意な短縮、雌子マウスの頭臀長の有意な短縮が示された。一方、雌子マウスの膣開口時期は、0.3および1.0mg/DEP/m^3群で有意に早まった。 ついで、ディーゼル排気微粒子(DEP)を直接妊娠マウスに皮下投与した結果、0.006、0.06、0.6、6.0、60mg/mouseの全投与濃度で有意な流産率の増加が認められた。流産率は高用量投与群よりも低用量投与群に高い傾向がみられた。DEPE皮下投与群では出生子の体重減少および雌マウスの膣開口時期に対する影響がみられた。つぎに、DEまたはDEPEに1ヶ月間または4ヶ月間曝露し,オキシトシン(OT)に対する子宮収縮反応を調べた。その結果、3.0mgDEP/m^3を含むDEの4ヶ月間曝露群ではOTに対する子宮収縮反応が有意に増大した。さらに、卵巣除去マウスにDEPEを直接皮下投与した実験において、有意な収縮増強が示された。 (2)DEPによる血管平滑筋および心筋に対する作用機序に関する研究 血管と心筋の両方に作用を有し、反応が明瞭なbenzene分画のNaOH可溶分画に注目し、それを第1〜15分画に分け、それぞれについて血管、心筋標本作用を観察した。心筋の強縮反応が得られた第3分画では、fraction1〜5のすべての分画に血管の弛緩反応が、そしてfraction1にのみ心筋の強縮反応が観察された。可溶分画の第3分画中に含まれる物質は、紫外分光法による解析によってフェノール性化合物であることが判明した。
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