(1)5-フォルミルウラシル(5-foU)は、メチル基へのOHラジカルの付加反応によって生じる主要なチミンの酸化的損傷の一つであり、私たちの研究から、in vitro、in vivoともに突然変異原性を示すことが分かってきた。さらに、大腸菌のNth、NeiおよびMutMタンパク質は5-foUの部位で二重鎖のオリゴヌクレオチドを特異的に切断することを明らかにした。また、これらの酵素をすべて欠損した大腸菌では5-foUの突然変異の頻度が野生株に比べて著しく高くなる。これらの事実は、Nth、Nei、MutMタンパク質が5-foU修復酵素であることを示している。さらに、ヒトのNthホモログ(hNTH1)、出芽酵母S. cerevisiaeのNtg1、Ntg2が同様に5-foU DNAグリコシラーゼを持つことが分かった。本研究では、さらに、ヒトのhNEIL1遺伝子をクローニングし、大腸菌nthnei変異株の過酸化水素高感受性をcomplementする活性を持つことを明らかにした。さらに、タンパク質がDNAグリコシラーゼ/APリアーゼの活性を持つことを確かめた。 (2)組換えPol IVタンパク質をアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、酸化損傷塩基を特定部位に含む合成オリゴヌクレオチドと反応させ、どのような伸長反応を起こすかをin vitroで調べた。その結果、Pol IVはアデニンの酸化損傷体の一つである2-ヒドロキシアデニン(2-ohA)の相手鎖に誤ってシトシンを挿入する高い活性を示した。2-ohAはDNA複製時に高い突然変異性を示すことから、Pol IVもその変異原性を高めるのに他のポリメラーゼとはまた違う形で関与していることが示唆される。
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