研究概要 |
電離放射線のヒトへ遺伝(継世代突然変異)リスクを、人類の通常の被曝形態(低線量・低線量率による被曝)で調べるのが本研究の目的である。ベラルーシの国土の約1/2を高濃度に汚染させたチェルノブイリ核施設崩壊による被曝は、程度の差こそあれ、人類が放射線曝露を受ける被曝形態そのものである。共同研究者K.G.Yelisseeva博士の強力で、ひとり当たり5mlの末梢血よりリンパ球を3本の容器に分配し冷凍保存したものを大阪大学医学部放射線基礎医学講座で凍結保存している。遺伝性変異の検出系として、遺伝的多系を利用した系、つまりマイクロサテライトの長さを指標とした検出系を最初に試みた。現時点で入手したリンパ球は、被曝者群(ベラルーシ共和国に居住し事故当時、除洗作業に携わった消防士および高濃度汚染地域住民、その配偶者と子供から構成されている家族)101家族、対照群としての非被曝者群(同国内の非汚染地区に居住している家族で被曝者の子供と年令、性別をマッチさせた子供を持つ家族)88家族である。リンパ球保存容器3本のうちの1本を培養し、約10^7個まで増殖させDNA, RNA抽出用に保存した。培養については、事故のあった被曝者群31家族、非被曝者群30家族を除いた被曝者群54、非被曝者群49家族のうち、現在培養中(23家族)のものを除いたはものについては殆ど培養に成功した。非被曝者群の15家族は近日中に追加される予定である。被曝者群12家族、非被曝者群8家族について、マイクロサテライト変異をPCR,自動分析器を用いD19S244,D19S245,DXS981について調べたが、変異はみつからなかった。D19S247,D19S47,D13S120,D9S63,D9S58については、同様な解析法で変異検出が可能なことを確認した。14年度は、リンパ球の培養増殖が早い時期に完了するので、増殖させたリンパ球よりDNAを抽出し、変異検出を主に行う予定である。
|