研究概要 |
クロアシアホウドリのAhR1およびAhR2、カワウのAhR1タンパクをそれぞれin vitroで発現させ、ショ糖密度勾配沈降法により[^3H]TCDDとの結合親和性を調査した。その結果、全てのAhRアイソフォームは[^3H]TCDDと特異的に結合した。TCDDに対して高感受性であるニワトリと低感受性であるアジサシのAhRで、リガンド結合能に関与する2ヵ所のアミノ酸置換部位が報告されている(ニワトリ→アジサシ:Ile^<325>→Val, Ser^<381>→Ala)。この部位のアミノ酸配列を比較すると、アホウドリAhR1はニワトリとアジサシの中間的なアミノ酸配列(Ile, Ala)であり、アホウドリAhR2ならびにカワウAhR1はアジサシと同様のアミノ酸配列を示した(Val, Ala)。実際にリガンド結合能を評価したところ、鳥類AhR1はアミノ酸配列から推察された結果と同様の傾向を示した(ニワトリAhR>アホウドリAhR1>カワウAhR1)。しかしながら、アホウドリAhR1とAhR2のTCDD結合能に差は認められず、鳥類AhR1・AhR2のリガンド結合能には異なる部位のアミノ酸が関与しているものと考えられた。 さらにマダイの受精卵をTCDDで暴露した結果、孵化率に影響は認められなかったが、孵化後にTCDD暴露濃度依存的な生存率の低下が認められた。受精後96時間でのLC50は0.36ng/gであり、マダイは魚類のなかでもTCDDに対して高感受性であることが明らかになった。成長遅延・卵黄嚢浮腫・下顎の低形成など魚類に典型的なTCDD毒性影響が暴露濃度依存的にみられた。一方、卵発生段階のAhR mRNA発現量を測定したところ、心拍や血液循環が観察される前段階で両AhRアイソフォームの発現量は増加した。TCDD処理により、AhR1の発現量は変化しなかったが、AhR2の発現量は増加した。
|