研究概要 |
肺気腫等の生活習慣病に関連する呼吸器傷害は、細菌感染により急性増悪することが多い。ディーゼル排気微粒子(DEP)が細菌毒素による肺傷害、肺血管透過性に及ぼす影響を検討した。DEPの経気道暴露は細菌毒素の経気道暴露による肺傷害を相乗的に増悪し、著明な肺胞出血・肺水腫、好中球浸潤をもたらした。この増悪効果はIL-1β等の炎症性サイトカインやKC、MCP-1,MIP-1αケモカイン、およびICAM-1の変動と並行し、特にMIP-1αの上昇とよく相関した。この変動にはNFkappaB等の核内転写因子の活性化やToll-like receptorの局所発現が重要な役割を演じていることが示唆された(文献5)。また、慢性閉塞性肺疾患に関連し、DEPおよびディーゼル排気(DE)がヒトの喘息における重要なアレルゲンであるダニによって引き起こされる気道炎症を相乗的に増悪することも明らかにした。この効果にはIL-5とともにEOTAXINの局所発現の亢進が重要な役割を演じていることが示唆された(文献6,9)。DEは気管支喘息の気道炎症のみならず、二層性の気道過敏症と粘液産生をも増悪することを明らかにした(文献1)。加えて、DEPが経口免疫寛容やThリンパ球のバランスを修飾することにより、免疫系に悪影響を及ぼしうることも明らかにした(文献2,3)。さらに、DEに含まれる二酸化窒素が、生活習慣病に関連する動脈硬化性変化を促進しうることを明らかにした(投稿中)。
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