研究概要 |
染色工場の廃液より採集した細菌(5種混合)は、アゾ色素のモデル化合物としたOrange16を120ppm濃度まで効率よく脱色分解することができた。また微好気条件とすることで、Orange16を繰り返し脱色することが可能であった。そこでこの中から最も高い脱色能を示した細菌を分離し、Aermonas sp. Aer2-1株と同定した。本細菌のアゾ色素脱色における培養条件を設定し、Orange16の脱色を行ったところ、1200ppmの濃度までは効率的に脱色でき、750ppm濃度では約50時間で完全に脱色した。 他方、同様にOrange IIを用いて分離同定したBacillus sp. B42株のアゾリダクターゼを各種クロマトグラフィーによって精製した。精製した酵素は分子量68K Da.のホモダイマーであり、pH6.0から7.0、60℃以下で安定であった。至適反応条件はpH6.5、55℃であった。本酵素は活性発現に補酵素としてNADPのみを要求した。他のアゾ化合物であるOrange16やNew cossinに高い活性を示したが、Trypan BlueやCongo Red等のジアゾ化合物には作用しなかった。反応速度論的に解析した結果、NADPに対するKmは0.13mM、Orange IIに対するKmは0.1mMであり、Vmは0.15μM/minであり、反応機構はping pong機構であることが示唆された。 Bacillus sp. B42株からアゾリダクターゼ遺伝子のクローニングを行った。データーベース上のBacillus cereusの全ゲノム配列を参考に、プライマーを設計しPCR法によって増幅したDNA断片の塩基配列を決定した。その結果得られた3種のDNA塩基配列から予想されるORFのサイズは先に精製した酵素とは異なっていた。得られた3種(azr6,azr8,azr18)を大腸菌によって高発現させた。その中で最も発現量が高かったAzr8について発現産物を精製して酵素の性質を決定した。精製酵素は分子量約23kDaの単量体であり、至適温度55℃、至適pH4.0であった。また酵素は45℃で完全に失活した。Azr8は補酵素としてNADHが必要であり、さらにFADやMNを添加することで3〜5倍活性が高くなった。基質特性ではMethyl RedやEthyl Redに高い活性を示し、OrangeG、Orange II等のナフタレン環を持つものには活性が弱いかあるいは反応しなかった。ジアゾ化合物にもわずかだが反応した。
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