1.直流対向ターゲット式スパッタ装置のプラズマ状態を当方所有のラングミュアプループ法によりアルゴンガス圧、電力を変化させながら調べ、電子温度・密度、基板への高エネルギー二次電子の飛来量を推定した。プラズマから離れるにつれ電子温度・密度は減少し、ガス圧の上昇につれ、電子温度は低下、電子密度は上昇した。電力の増大により電子温度、電子密度は上昇した。このことから電力の上昇、プラズマへの接近につれ、二次電子のエネルギーと飛来量が多くなると推定できる。 2.TiO_2薄膜を反応性スパッタ法によりガラス基板上に形成させ、膜形成速度、結晶構造、表面形態並びに光学特性を調べた。膜形成速度は電力400Wで、最大12.8nm/minであった。TiO_2形成膜はX線回折よりアナターゼ型の結晶構造をもち、A(101)、A(112)、A(211)、A(220)面における回折ピークが確認された。また、薄膜形成時の基板位置により結晶面の配向性が異なることが示された。 3.形成膜の多くは光吸収端が約380nmであり、プラズマに接近するほど薄膜は高速形成できるが、表面は粗く、やや白濁しており透過率は長波長領域でなだらかに減少することが確認された。 4.本研究で作製されたTiO_2薄膜は、メタノールのガス分解実験の結果、光触媒作用を有することが確認され、プラズマに近い位置で形成された薄膜の方が分解効率が良いことも示された。プラズマにより、TiO_2膜の構造・特性を制御できることを確認した。 5.TiO_2薄膜の光吸収特性に及ぼす膜厚方向の組成傾斜、微少金属電極の担持、同時スパッタ法による膜中への金属混入、等の効果が明確にされず、可視光反応化に新しい提案が必要である。 6.それで、可視光領域での反応を促進するため、TiO_2/WO_3二層膜を形成し、メタノールガスの分解実験を行った結果、最適な条件での二層化によりメタノールガスの分解時間がTiO_2単層の場合と比較して、著しく短縮されることが確認され、光触媒効果において可視光が有効利用されていることが示された。
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