1.TiO_2形成膜はX線回折、ラマン分光法よりアナターゼ型結晶構造をもち、基板がプラズマに近づくにつれ、A(220)面の回折ピークが大きくなることが示された。プラズマに近い位置では薄膜は高速で形成できるが、表面の粗さは大きく、やや白濁しており、透過率は長波長領域でなだらかに減少することが確認された。本実験では、基板をプラズマに曝すことで、プラズマの輻射熱により、適度なアニール効果がもたらされアナターゼ結晶が形成されること、荷電粒子の衝撃により格子欠陥が形成され可視光を吸収できること、そしてポーラスな表面の薄膜を形成できること、など、プラズマによりTiO_2膜の構造・特性を制御できることを明らかにした。 2.次に、高周波マグネトロンスパッタ装置を用いてWO_3薄膜を形成し、その結晶構造、表面形態並びに光学特性を調べた。WO_3形成膜はX線回折の測定より、単斜晶型の結晶構造をもち、薄膜形成時のスパッタガス圧の変化により結晶の基板配向性に著しい差異が生じた。スパッタガス圧が高くなるほど、灰色の金属色から黄色、更に薄黄色と変化し、形成膜の色調が、スパッタガス圧に依存することが確認された。形成膜の透過率はスパッタガス圧に依存し、ガス圧が低くなるほど、長波長領域でなだらかに減少し、光吸収端が可視光にシフトすることが確認された。 3.TiO_2/WO_3二層膜を形成し、その赤外分光特性の測定からメタノールガスの分解実験の評価を行った。WO_3膜を下地層とした二層化により、メタノールガス中の酸化炭素の分解時間が速くなることが明らかにされた。WO_3膜の光透過率特性が良好な膜ほど、メタノールガスの分解時間が短縮され、可視光照射130分後でTiO_2単層膜の場合に比べ、約2倍程度短縮され、光触媒効果において可視光が有効に利用されていることが示された。
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