研究概要 |
光屈性分子の構造と機能発現の分子機構を解明する目的で、植物生理化学、有機化学及び分子生物学的手法を用いて研究を行い、以下の知見を得た。1.これまで光屈性の研究に最も汎用されてきたアベナとトウモロコシ幼葉鞘を用いて、それぞれの光屈性分子の候補物質の探索を行い、アベナからavenacosideとisovitexin-2"-0-α-L-arabinopyranosideを、トウモロコシから2-(2,4-dihydroxy-7-methoxy-2H-1,4-benzoxazin-3(4H)-one)β-glucopyranosideと2,4-dihydroxy-7-methoxy-2 H-1,4-benzoxazin-3(4H)-oneを単離・同定した。アベナから単離・同定した物質はいずれも光側組織で増量し、更にアベナ幼葉鞘の片側にラノリンペーストで投与した場合、投与側に屈曲することがわかった。従って、以前アベナの光屈性分子として単離・同定したuridineと共に光屈性分子として機能していることが示唆された。また、トウモロコシから単離・同定した物質のうち、前者は光照射によって増量しないが、後者は顕著に光側組織で増量することがわかった。また、これらの物質をアベナの場合と同様にトウモロコシ幼葉鞘の片側に投与した場合、後者が屈曲を誘導することが観察された。従って、トウモロコシ幼葉鞘の光屈性は2,4-dihydroxy-7-methoxy-2 H-1,4-benzoxazin-3(4H)-oneが重要な役割を演じていることが示唆された。2.シロイヌナズナの光屈性不感応植物を用いて、光屈性分子の候補物質生成の有無を調べた結果、数種の光誘導性・成長抑制物質が光刺激によって生成されないことがわかり、これらの物質がシロイヌナズナの光屈性において重要な役割を演じていることが示唆された。
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