昨年度までの研究で、合成法を確立した5位の末端にアミノ基を有する5位置換デオキシチミヂン誘導体の末端アミノ基を介して、リジン、アルギニン、ヒスチヂン、トリプトファン、グルタミン酸、チロシンなどの各種アミノ酸を導入した修飾チミヂン三りん酸を合成した。これらの種々のアミノ酸導入チミヂン誘導体を基質に用い、KOD Dash DNAポリメラーゼを用いたPCR反応を行った。その結果、取り込み効率は天然基質であるdTTPと比べ、低下するものの各種のアミノ酸を導入した修飾DNAの酵素合成が可能であることを明らかにした。しかし、5位にアニオン性のグルタミン酸、アスパラギン酸を導入した修飾基質は取り込み効率が極端に落ちることを認めた。さらに、他の種々の耐熱性DNAポリメラーゼを用いてPCR反応による修飾DNAの酵素合成を検討した結果、Vent(exo-)あるいはKODなどのBファミリーDNAポリメラーゼは我々が合成した修飾基質の取り込み能は優れているのに対し、PCR反応で広く用いられているTaqなどのA-ファミリーDNAポリメラーゼは修飾DNAの合成には不適当であった。さらに、5位に置換基を導入したシチヂン誘導体を合成し、KOD DashあるいはVent(exo-)DNAポリメラーゼを用いたPCR反応の基質となるか検討したところ、シチヂン誘導体の置換基によってはこれらの酵素の基質となり、対応するシチヂン誘導体を導入した修飾DNAの合成が可能であることを明らかにした。さらに、PCR法による修飾DNAの合成と試験管内選択法を適用して、薬剤サリドマイド、細胞表面にある糖鎖、シアリルラクトースあるいは甘味剤アスパルテームに対して特異的に結合する修飾DNAアプタマーの創製を行った。また、アルドール反応を触媒する修飾DNA触媒の創製を進めている。
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