研究概要 |
1 新規ポリケタイド合成酵素遺伝子のクローニング 糸状菌還元型ポリケタイド合成酵素遺伝子として既にクローニングされているロバスタチンおよびT-トキシン生合成のPKSの配列をもとに、縮重入りプライマーをデザインし、ソラナピロン生産株Altanaria solaniのゲノムDNAを鋳型にPCRを行い、約900bpの断片を得た。その配列は既知の還元型PKSと高い相同性を示したことから、Alt. solaniのゲノムDNAコスミドライブラリーを構築し、このPCR断片をプローブとしたスクリーニングを行い陽性クローンを取得した。陽性クローンインサートの塩基配列を決定し、1個のPKS、1個の酸化酵素、および2個のCytochrome P-450からなる生合成遺伝子クラスターの存在を明らかにした。このPKSにはKeto Reductase, Enoyl Reductase, Dehydrataseといった還元型ポリケタイド合成酵素に特徴的なドメインが存在し、またMethyl Transferaseドメインも存在することから、このクラスターがソラナピロン生合成に関わるものと推測され、現在、親株の遺伝子破壊および異種糸状菌におけるPKSの発現によりその機能同定を行っている。 2 ポリケタイド合成酵素阻害活性評価系の開発 新規に得られたポリケタイド合成酵素および、すでにクローン化したAtx, wA, PKS1, alb1各遺伝子を、異種糸状菌発現用プラスミドベクターに組み込み、A. oryzaeを形質転換し、各遺伝子の発現を誘導しポリケタイドの生産性を検討した。このうち生産性の高かったナフトピロン合成酵素alb1による形質転換菌体を培養し、誘導培地に移植すると同時にテストサンプルを添加し、その後7日まで培地上清中に遊離してくるナフトピロンの量を410nmの吸光度にて経時的にモニターした。その結果、陽性対照薬として用いたセルレニン添加群では菌体重量に若干差がみられるものの410nmの吸光度増加は10mg/mlの濃度で完全に阻害され、天然物を対照とした一次スクリーニング系として利用可能なことが判明した。一方in vitroで高活性を示した形質転換体抽出タンパクについては各ポリケタイド合成酵素の精製を行い、放射性基質を用いる二次スクリーニング用のアッセイ条件を確立した。また、各種薬用植物・生薬を含水エタノールにて熱時抽出し、阻害活性の一次スクリーニング用のサンプルを調整した。
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