Aspergillus fumigatusは、ヒトアスペルギルス症の主たる原因菌であり、ヒトへの感染にはDHN-メラニンの生成が重要な要因となっている。ポリケタイド合成酵素(PKS)Alblpは、A.fumigatusにおけるDHN-メラニン生合成の最初の反応を触媒する鍵酵素であり、その阻害剤をスクリーニングするため、初年度は異種糸状菌での発現系を用いたアッセイ系を検討したが、菌体が集塊し、生育にバラツキが生じる、また、時間がかかる、などの問題点があった。 そこで、単細胞で生育し、発現制御もしやすい酵母発現系を用いるin vivoアッセイ系の確立を試みた。まず、alb1 cDNAを酵母の発現ベクターpYES-DEST52に組み込み、発現プラスミドpYES-albYを構築した。これをphosphopantetheinyl transferase発現プラスミドpKOS12-128aとともに酵母INVSc1に導入した。この形質転換酵母にガラクトースとエタノールによる誘導をかけると、Alblpの発現と活性型への修飾によりAlblp反応の生成物であり、DHN-メラニンの前駆体であるYWA1を生産した。これは、糸状菌由来PKSの酵母での機能発現として初の例である。 YWA1は406nmに極大吸収をもつことから、406nmの吸収をAlblp PKS活性の指標として、前培養した形質転換酵母を一晩誘導培養後、培養液を酢酸エチルで抽出し、その406nm吸光度を測定するアッセイ系を構築した。 まず、Alblp阻害のコントロールとして、既知のPKS阻害剤であるセルレニンの阻害活性を本アッセイ系で確認した。次いで、このアッセイ系を用いて、糸状菌培養抽出液240サンプルをスクリーニングし、5検体に阻害活性を見出した。その中で強い阻害活性を示した2検体にっいて、活性本体を同定すべく培養条件、分離条件などを検討したが、単一活性物質の単離には至っていない。
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