糖タンパク質に特異な構造モチーフの有機化学的構築

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13480191
• 研究機関: 特殊法人理化学研究所
• 研究代表者: 伊藤 幸成 理化学研究所, 細胞制御化学研究室, 主任研究員 (80168385)
• 研究分担者: 石渡 明弘 理化学研究所, 細胞制御化学研究室, 研究員 (70342748) ; 眞鍋 史乃 理化学研究所, 細胞制御化学研究室, 研究員 (60300901) ; 松尾 一郎 理化学研究所, 細胞制御化学研究室, 研究員 (40342852)
• キーワード: 糖タンパク質 / 品質管理 / シャペロン / アスパラギン結合型 / 糖鎖 / 立体選択的合成 / 超高圧 / C-マンノシルトリプトファン

研究概要

糖鎖生物学の中で最近特に注目を集め、世界各国で活発な研究が行われているものに、アスパラギン結合型糖鎖と細胞内レクチン/分子シャペロンとの相互作用による新生タンパク質の品質管理があげられる。我々はアスパラギン結合型糖鎖の合成において大きな障壁であった基幹構造の立体選択的構築について、独自の反応を開発することによってこれを解決した。今年度は小胞体内シャペロであるカルネキシン(CNX)及びカルレティキュリン(CRT)のリガンドと考えられている12糖(Gic_1Man_9GlcNAc_2)の合成を達成した。すなわち、前年度の成果をもとに調製した3つのユニット(Man_1GlcNAc_2,Man_3,Man_5)をつなぎ合わせ11糖を構築した。続いて、選択的な脱保護と立体選択的なグルコース残基の導入を行なった。この過程で、他の条件では困難であった保護基の除去において超高圧条件(約1万気圧)が有効であることを見い出した。最後に全ての保護基を除去し、目的とする12糖の合成を達成した。また、末端のグルコースがβの立体化学で結合している非天然型の12糖も合成した。更に、NMRによってCRTとの相互作用の観測にも併せて成功した。現在他の小胞体内レクチンとの相互作用を含めてより詳細な解析を行なっている。
一方、C-マンノシルトリプトファンの生体機能の解明とタンパク質構造に与える影響を調べるため、これを含むヒトRNase2部分構造、類縁体として興味が持たれるC-グルコシルトリプトファンの合成を達成した。以上に加えて、糖-アスパラギン複合体や糖ペプチド合成における有用な方法論、糖鎖固相合成における新たなモニタリング法、の2点についても成果を得た。

研究成果

• [文献書誌] Kimitoshi Sakamoto, Yoshiaki Nakahara, Yukishige Ito: "Combination of silyl carbamate and amino acid fluoride for solid phase peptide synthesis"Tetrahedron Lett. 43. 1515-1518 (2002)
• [文献書誌] Akihiro Ishiwata, Maki Takatani, Yoshiaki Nakahara, Yukishige Ito: "Synthesis of N-linked glycosyl asparagine derivatives with unprotected sugar components"Synlett. 634-636 (2002)
• [文献書誌] Ichiro Matuo, Megumi Wada, Yukishige Ito: "Desilylation under high pressure"Tetrahedron Lett. 43. 3273-3275 (2002)
• [文献書誌] T.Ichiyanagi, M.Takatani, K.Sakamoto, Yu.Nakahara, Y.Ito, H.Hojo, YoNakahara: "Synthesis of mucin-type glycopeptide (βhCG 130-145) by on-resin fragment condensation of the glycopeptide segments canying unmasked oligosaccharide"Tetrahedron Lett.. 43. 3297-3300 (2002)
• [文献書誌] Yukishige Ito, Shino Manabe: "Tag-reporter and resin capture-release strategy in oligosaccharide synthesis"Chem.Eur.J.. 8. 3077-3084 (2002)
• [文献書誌] Y.Yoshida, T.Chiba, F.Tokunaga, H.Kawasaki, K.Iwai, T.Uzuki, Y.Ito, K.Matsuoka, M.Yoshida, K.Tanaka, T.Tai: "E3 ubiquitin-ligase that recognises sugar chains"Nature. 418. 438-442 (2002)
• [文献書誌] Shiro Komba, Yukishige Ito: "Novel substrates for efficient enzymatic transglycosylation by Bacillus circuland β-galactosidase"Can.J.Chem.. 80. 1174-1185 (2002)
• [文献書誌] Shino Manabe, Yukishige Ito: "On-Resin Real-Time Reaction Monitoring of Solid-Phase Oligosaccharide Synthesis"J.Am.Chem.Soc.. 124. 12638-12639 (2002)
• [文献書誌] Hiroshi Hinou, Xue-Long Sun, Yukishige Ito: "Bisubstrate-type inhibitors of sialy ltransferases"Tetrahedron Lett.. 43. 9147-9150 (2002)