研究概要 |
GPIアンカー型タンパク質の生合成に関与する全遺伝子群を解明するため、エロリジン(GPIアンカー型タンパク質に結合して細胞を溶解する細菌毒素)に対する抵抗性を指標に、新規のGPIアンカー欠損変異細胞株をスクリーニングしてきた。そのうちの1株が、GPIアンカーをタンパク質に結合させる酵素であるGPIトランスアミダーゼの欠損株であることがわかった。この変異株の責任遺伝子を発現クローニングしPIG-Uと名付けた。PIG-Uは、435アミノ酸のタンパク質で、GPIトランスアミダーゼの既知の4成分(GPI8,GAA1,PIG-S, PIG-T)とともにタンパク質複合体を形成していることがわかった。PIG-Uの出芽酵母の構造的ホモログはCdc91pとして報告されているタンパク質であり、その遺伝子をPIG-U変異細胞株に発現させると部分的にGPIアンカー型タンパク質の発現が回復することから、Cdc91pがPIG-Uのオーソログであることがわかった。すなわち、ヒトと出芽酵母のGPIトランスアミダーゼがよく保存されていることがわかった。PIG-UとCdc91pで保存されている疎水性領域で、機能的にも重要な部分が長鎖脂肪酸伸長酵素の部分と相同性を持っていることから、PIG-UがGPIアンカーの脂質部分の結合に働いている可能性が示唆された。また、5成分のうちGPI付加シグナルペプチドの切断に働く触媒サブユニットであるGPI8はPIG-Tとジスルフィド結合でつながっており、PIG-Tによって安定化されていることがわかった。
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