研究概要 |
1.ジオールデヒドラターゼ-アデニニルペンチルコバラミン複合体の光照射によるラジカルの生成 B_<12>補酵素関与酵素反応の第一段階であるコバルト-炭素結合のホモリシスによるラジカル生成のモデルとして,ジオールデヒドラターゼ-アデニニルペンチルコバラミン複合体の結晶に可視光を照射し,X線構造解析を行った。可視光照射により,コバルトと5'炭素間に存在していた電子密度の消失とペンタメチレン基部分の温度因子の上昇が認められた。これらにより,X線照射では開裂しなかったコバルト-炭素結合が可視光照射により開裂し,アデニン部が酵素に固定されたラジカルが生成したことが示された。 2.理論計算によるジオールデヒドラターゼ反応の水素引き抜き過程の検証 単純化した酵素モデルを用いる理論計算により,ジオールデヒドラターゼ反応の必須ステップである基質からの水素引き抜きと再結合の段階の活性化エネルギーを求めた。これらの値が基質の結合エネルギーによってまかなわれる程度の大きさであったことから,これらのラジカル過程は実際に起こり得ることが示された。 3.グリセロールデヒドラターゼ再活性化因子の精製と性質 グリセロールにより自殺不活性化されたグリセロールデヒドラターゼ(GD)を再活性化する因子の遺伝子(gdrAB遺伝子)を高発現させた大腸菌の無細胞抽出液より,GdrAおよびGdrB蛋白質を単一にまで精製した。両蛋白質は共精製され,分子量約14万の複合体として存在した。この複合体は,AdoCbl, ATP, Mg^<2+>存在下でグリセロールや酸素により不活性化されたGDを再活性化し,また不活性化された複合体のモデルであるGD・CN-Cbl複合体をも活性化した。その機構を詳細に解析することで,ATPとMg^<2+>存在下での再活性化因子によるGD再活性化が,ADPによるコバラミンの放出,ATPによるアポ酵素-再活性化因子複合体の解離,の2段階で起こることを示した。
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