ピリドキサール蛋白質の精密立体構造と基質の二重認識

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13480196
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 広津 建 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10047269)
• 研究分担者: 倉光 成紀 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60153368) ; 宮原 郁子 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 講師 (40271176)
• キーワード: アミノ基転移酵素 / 誘導適合 / 基質認識 / ピリドキサール5'-リン酸 / PLP酵素 / X線結晶解析 / 分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素 / トレオニン合成酵素

研究概要

分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素(BCAT)は疎水性アミノ酸と酸性アミノ酸であるグルタミン酸を基質とする。BCATの活性部位は疎水性と酸性のアミノ酸側鎖の両方を認識(基質二重認識)できるはずである。高度好熱菌由来BCAT(tBCAT)およびその疎水性および酸性基質類似物との複合体のX線構造解析を行い、基質の二重認識機構を明らかにした。また、大腸菌由来のBCATでは基質結合に際してのopen型からclosed型への構造変化が重要と考えられてきた。しかし、tBCATの結果は、ヒスチジノールリン酸アミノ基転移酵素の結果と同様にcolsed型構造は反応に必須ではないことが示された。反応部位が溶媒領域から隔離されれば良いということであろう。tBCATは誘導適合をほとんど示さないので、「鍵と鍵穴」モデルに近い古いタイプの酵素だと考えられる。そのため、tBCATのKcat/KmはeBCATに比べ2桁ほど小さい。これは、tBCATが誘導適合による高度の認識(反応に最も都合の良い位置に基質を配置させる)を犠牲にして、温度で反応速度をかせいでいるからだと思われる。
トレオニン合成酵素(TS)はO-ホスホホモセリンのβ,γ置換反応を触媒しトレオニンを生成する。高度好熱菌由来のTS(tTS)のネイティブ型、および基質アナログとの複合体の立体構造を約2.1Å分解能で決定した。tTSの全体構造は三つのドメインからできている。ネイティブ型酵素と複合体の構造を比較することにより、tTSは基質結合に際して小ドメインが活性部位を閉じるように回転する。この構造変化は基質のリン酸基とカルボキシル基を認識するのに重要である。基質類似物存在下で測定した吸収スペクトルから複合体はケチミンの状態にあることがわかった。

研究成果

• [文献書誌] H.Hayashi, H.Mizuguchi, I.Miyahara, Y.Nakajima, K.Hirotsu: "Conformational change in aspartate aminotransferase on substrate binding induces strain in the catalytic groun and enhances catalysis"Journal of Biological Chemistry. 278(11). 9481-9488 (2003)
• [文献書誌] M.Goto, I.Miyahara, H.Hayashi, H.Kagamiyama, K.Hirotsu: "Crystal structures of branched-chain amino acid aminotransferase complexed with glutamate and glutarate"Biochemistry. (in press). (2003)
• [文献書誌] M.Goto, Y.Nakajima, K.Hirotsu: "Crystal structure of argininosuccinate synthetase from Thermus thermonhilus HB8 Structural basis for the catalytic action"Journal of Biological Chemistry. 277(18). 15890-15896 (2002)
• [文献書誌] T.Nakai, N.Nakagawa, N.Maoka, R.Masui, S.Kuramitsu, N.Kamiya: "Coexpression, purification, crystallization and preliminary X-ray characterization of glycine decarboxylase (P-protein) of the glycine-cleavage system from Thermus thermophilus HB8"Acta Crystallogr D Biol Crystallogr.. 59(3). 554-557 (2003)