研究概要 |
血管障害時に露出するコラーゲンにより活性化した血小板上で、プロトロンビン、凝固X因子やIX因子は瞬時に活性化され、局所的な止血が完成する。この活性化反応は、カルシウム及びホスファチジルセリン依存性の生体膜上の活性化反応として重要である。しかし、凝固因子の生体膜リン脂質の結合機構や酵素反応増幅機序の分子レベルの解析は殆ど行われておらず、ただプロトロンビンのGlaドメイン(γ-カルボキシグルタミン酸ドメイン)を介して生体膜のリン脂質と結合しているという実験事実のみ明らかにされている状態である。一方、我々が単離した3種類のヘビ毒由来の抗凝固タンパク質(IX/X-bp,IX-bp,X-bp,分子量2.9万)は、Glaドメインにモル比1:1で結合することを明らかにしてきた。 従って、これらのGlaドメイン結合タンパク質はGlaドメインの機能を解析する有力なツールである。 今年度は、血液凝固因子のGlaドメインとX-bp複合体の結晶化とその結晶構造解析を行ない、血液凝固因子のGlaドメインとリン脂質の結合様式を分子レベルで解明することを目的とする。IX/X-bp(凝固IX因子/X因子結合タンパク質)、X-bp(X因子結合タンパク質)をヘビ毒1gからそれぞれ5mg単離した。これを10回繰返し、それぞれ50mg単離した。ウシ血漿25lから凝固X因子を20mg単離した。これを10回繰り返し、X因子を200mg単離した。X因子のα-キモトリプシンによる限定分解によりX因子のGlaドメインを断片化後、Glaドメインペプヂド(残基1-44)を5mg単離した。X因子GlaドメインペプチドとX-bp又はIX/X-bpを等モル混合し、1mMCa存在下でのゲルろ過により複合体を単離し、小スケールではX-bpとGlaドメイン複合体の結晶化に成功した。 現在、スケールを上げ、Glaドメイン複合体の結晶化とそのX線構造解析を行っている。
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