研究概要 |
活性化した血小板上で、プロトロンビンや活性型凝固X因子やIX因子は瞬時に活性化され、局所的な止血が完成する。しかし、凝固因子の生体膜リン脂質上での活性化や分子レベルの結合機構についての解析は殆ど行われていない。我々が単離した3種類のヘビ毒由来の抗凝固タンパク質(IX/X-bp,IX-bp,X-bp,分子量2.9万)は、Glaドメインにモル比1:1で強固に結合し抗凝固活性を示すことをこの数年来、明らかにしてきた。従って、これらのGlaドメイン結合タンパク質はGlaドメインの機能を解析する有力なツールである。 今回、凝固IX因子のリン脂質結合部位であるGlaドメインとIX-bpの複合体の結晶化とその結晶構造解析を行ない、血液凝固因子のGlaドメインとリン脂質の結合様式を分子レベルで解明した。 さらに1mM Caと5mM Mg存在下でのIX-bp(凝固IX因子結合タンパク質)と凝固IX因子Glaドメインペプチド(残基1-46)の複合体を単離した。次いでGlaドメイン複合体の結晶化とそのX線構造解析を行った。構造既知のIX/X-bp(Nature Str.Biol.で発表済)を利用した分子置換法により立体構造を決定した。 一方、我々は血小板膜上に存在するコラーゲン受容体(インテグリンα_2β_1)と結合するEMS16を単離し、その諸性質を明らかにした。α_2β_1のコラーゲン結合部位を含むIドメインとその結合蛋白質(EMS16)との複合体を結晶化し、その結晶構造解析に成功した。その結果、EMS16のIドメイン結合部位を明らかにすることにより、EMS16によるコラーゲン血小板凝集阻害機作を明らかにした。
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