研究概要 |
破骨細胞分化因子RANKLは膜型タンパク質であり,破骨細胞分化においては骨芽細胞と破骨細胞前駆細胞の細胞間接触が必須なことから膜型で機能すると考えられている.一方,可溶型RANKLは活性化T細胞により産生され炎症性骨破壊に関与するという報告や,ヒトの関節リウマチ患者の血中可溶型RANKL濃度が上昇するという報告があるが,その機能は不明である.我々は昨年度可溶型RANKLを過剰発現するトランスジェニックマウスを作製し,重篤な骨粗鬆症を呈することを報告した.今年度は生理的および病的な状態における可溶型RANKLの役割を調べる目的で,可溶型RANKLトランスジェニックマウスとRANKL-KOマウスの交配を行った.驚いたことにRANKL-KOマウスにおいて認められる破骨細胞欠損,大理石骨病,T, B細胞分化障害,リンパ節欠損などの異常が可溶型RANKLの導入によりほとんど回復した.以上から,RANKLは本来膜型で機能するが,膜型が存在しなくても可溶型だけで十分その役割を果たすことが示唆された.このことは病態における可溶型RANKLの増加がその原因になっている可能性を示唆するものである. 一方,骨芽細胞分化に必須の転写因子であるRunx2の欠損マウスには,骨芽細胞が存在せず軟骨はあるが骨は欠損している.このRunx2欠損マウスと可溶型RANKLトランスジェニックマウスとの交配も行った.その結果,Runx2欠損マウスでは骨芽細胞が存在しないためほとんど認められない破骨細胞が交配マウスにおいて増加することが判明した.破骨細胞の分化にはRANKLが必須であり,Runx2により分化する骨芽細胞がRANKLの重要な供給源となることが明らかとなった.一方,交配マウスにおける破骨細胞の分化は可溶型RANKLによりレスキューされたものと考えられた.
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