研究概要 |
ミトコンドリアは二つの膜(外膜と内膜)で囲まれているので,ミトコンドリアのマトリクスに向かうタンパク質フラックスは,外膜と内膜のトランスロケータにより二枚の膜を通過することになるが,この際,何らかの仕組みにより,外膜透過と内膜透過がうまく協調して行われる必要がある。今回われわれは,ミトコンドリア内膜のトランスロケータを構成する新因子としてTim50を発見し,その機能解析を行った。出芽酵母において,Tim50の発現をshut offしてTim50量を減少させると、細胞内にミトコンドリアタンパク質の前駆体が蓄積すること,Tim50量が減少したミトコンドリアを単離してin vitroでのインポート実験を行うと,TIM23複合体を利用するプレ配列を持った前駆体のインポート効率は著しく低下したが,TIM22複合体を利用するプレ配列を持たない内膜タンパク質のインポート効率は変化しなかった。Tim50の1/3はTIM23複合体に含まれること,Tim50はTim23の膜間部領域と直接相互作用することを見出した。またTim50の量を減少させたり増加させたりすると,Tim23の外膜への挿入が影響を受けることが明らかになった。内膜の膜電位を消失させて,TOM複合体レベルで膜透過が停止した中間体を形成し,架橋実験を行ったところ,Tim50との架橋が検出された。以上の結果は,Tim50はTIM23複合体の新規サブユニットで,前駆体タンパク質の内膜透過に必須であること,特にTim23とともに外膜から内膜への前駆タンパク質の効率良い移動に関わっていることを示している。言い換えれば,長い間謎であった,ミトコンドリアの外膜と内膜の膜透過プロセスの共役を担う因子がTim50である可能性が高いことを示している。
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