研究課題/領域番号 |
13480221
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
片岡 幹雄 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (30150254)
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研究分担者 |
上久保 裕生 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助手 (20311128)
山崎 洋一 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助手 (40332770)
今元 泰 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教授 (80263200)
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キーワード | イェロープロテイン / N末欠損体 / 光反応サイクル / キモトリプシン処理 / 閃光分解 / FTIR / X線溶液散乱 / 部位特異的変異体 |
研究概要 |
イェロープロテイン(以下PYP)をキモトリプシン処理した断片を3種類精製した。質量分析及びアミノ酸分析により、これらはN末から6残基、15残基、23残基を欠損したものであることを確認した。これら3種類の欠損PYP(T6,T15,T23)、ミリ秒領域での閃光分解実験を行ったところ、M中間体崩壊の時定数は、それぞれ18秒、300秒、600秒となり、未消化のPYPの時定数、0.13秒に比べて、著しい長寿命化が認められた。しかし、暗状態、M中間体とも吸収スペクトルには未消化のものと大きな変化はなかった。M中間体の基本構造は、24番目以降のコア部分が形成するが、N末の領域は、その生成及び崩壊を制御すると考えられる。時定数への効果から、Met1からPhe6の領域が速やかな崩壊に重要であると考えられる。M中間体の崩壊過程に対する塩効果を調べたところ、未消化のPYPとT6では、塩濃度の増加とともに崩壊が遅くなるが、600mMを越えると逆に速くなるという二相性の依存性が見られたが、T15とT23では、100mM程度までは影響がなく、それ以上では速くなった。この結果は、未消化のPYPとT6では、静電相互作用と疎水的相互作用が働いているが、T15とT23とには疎水的相互作用のみが働いていることを示唆する。そして、静電相互作用に重要な領域が、Gly7からLeu15の領域に存在することを示している。水溶液資料を用いたFTIR測定により、N末部とコア部分のβ構造との間に相互作用のあることが示され、疎水相互作用の主体がこの相互作用であろうと考えられた。Trp119のグリシン置換体やPhe121のアラニン置換体では、M中間体崩壊の速度が遅くなり、また、暗状態、M中間体とも安定性が低下している。この結果は、疎水相互作用が弱まったことによると解釈される。これらの残基は、C末のβ構造に存在している。したがって、M中間体の生成・崩壊を制御するために本質的な相互作用の一つは、Ala16-Gly23の領域とC末のβ構造との間の疎水相互作用であると結論できる。
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