研究概要 |
イェロープロテイン(PYP)の光反応に伴う構造変化及びPYPの標的分子を検索し、以下の結果を得た。 1.結晶構造解析による光反応中間体の構造が、溶液中での様々な結果をかならずしも適切に説明しないことが知られている。そこで、結晶中での光反応を顕微分光により測定した。光反応する成分は、結晶性が高まるほど減少した。また、M中間体の崩壊速度は、結晶性が高まるほど速くなった。結晶中では、光反応が起きないか、または反応速度が極めて速くなっていることが推測される。結晶中での光反応は、結晶格子による力場の影響を敏感に受けることが示された。 2.中間体形成に伴う構造変化を、トリプシン処理によりN端6,15,23残基を切断したPYP(T6,T15,T23)について、CD及びFTIRにより調べた。光照射により222nmを中心とするCDシグナルは減少した。これらの減少分は、N端のヘリックスから予測される値よりも大きかった。FTIRにより、β構造に起因するアミドモードの強度が減少し、ピーク位置がシフトした。これらから、Cドメインのαヘリックスがほどけ、同時にβコアの構造変化が誘導されると推測された。NaClは、全長のPYP及びT6のM中間体の崩壊速度を、低濃度では減速させ、高濃度では加速させる。一方、T15、T23については、加速効果だけが観測される。これらから、M中間体における構造変化にはN端のドメインとCドメインのβ構造間の静電相互作用が関わっていること、静電相互作用をN末7番目から15番目の残基が担うことが明らかになった。 3.Ectothiohalophira halophilaの菌体破砕分画から、M中間体の崩壊速度を遅くする成分のあることが発見された。この成分は、タンパク質であることが明らかになった。現在、ゲルろ過による精製を行なっている。
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