基本転写因子のTFIIEαのZn結合ドメインの立体構造をNMRにより解析した。構造解析の結果全く新しいフォールドのZn結合ドメインであった。分子表面に露出している酸性アミノ酸を標的にして部位特異的な変異体を作成した。立体構造を変化させることなく、基本転写活性を約1.5〜2.5倍増加させることができた。具体的にはD140Aは約1.5倍の転写活性化を、D164Aは約2倍の転写活性化を、D164Kは約2.5倍の転写化成化を野生型に比して増加させることができた。加えて、これらの変異体は他の基本転写因子との相互作用にも影響を与えない。また、鋳型となるプロモーターDNAのトポロジーによらず、転写活性を増加させることができる。 また二重鎖テロメア配列に結合しテロメラーゼの活性を制御するタンパク質としてヒトではTRF1とTRF2がある。今回TRF2のDNA結合ドメインとテロメアDNAとの複合体構造をNMRで決定した。3本のヘリックスからなるMyb様構造を保持していた。3本のヘリックスの立体配置はフリーの時と同じであったがDNAの小さな溝で特異的にTT配列を認識しているN末のフレキシブルアームがフリーの時に比べてDNAとの結合により固定化された。3番目のヘリックスがAGGG配列をDNAの大きな溝で特異的に認識していた。以前に決定したTRF1とテロメアDNAとの複合体構造と比較してDNA認識様式はほとんど同じであったがTT配列をDNAの小さな溝で認識するのにTRF2はリシン残基を使用しているがTRF1はアルギニン残基を使用していた。TRF1のほうがTRF2よりDNA結合能が強いのでTRF2のリシン残基をアルギニン残基に変えた変異体を作成したところ野生型よりもDNA結合能が強くなった。
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