1)熱ショック応答システムの細胞防御機構の解析 (1)熱ショック転写因子群による第二の細胞防御の分子機構を明らかにした。 熱ショック転写因子群がHsp90の構成的な発現維持に関わっており、Hsp90がCdc2蛋白質の高温での安定性を規定していることが明かとなった。この系が働かなくなるとわずかに高い温度でもCdc2蛋白質の不安定化が起こり細胞周期がG_2期で停止する。(2)熱ショック転写因子群の分子進化と第三の細胞防御の分子機構を明らかにした。ニワトリHSF1熱ショック応答を導く因子とならないことを示した。さらに、これまでヒトのHSF1はストレスにより熱ショック応答を誘導するために隠されていた細胞死抑制機能が、熱ショック応答を誘導しないニワトリのHSF1の解析から明らかになった。 2)熱ショック応答システムの生理的役割の解明 (1)新しいHSF4の生理機能を明らかにした。HSF4欠損マウスではすべてレンズの白内障を発症することを見いだした。現在、HSF4のターゲット遺伝子の検索を行っている。(2)HSF1を介した精子形成の品質管理機構を明らかにした。HSF1は分化した精子形成細胞の細胞死を促進する因子であることを明かにした。さらに、主要な熱ショック遺伝子は温熱ストレスをうけた精子形成細胞では誘導されないが、新規熱ショック遺伝子TDAG51は精子形成細胞で著明な誘導をうけた。HSF1欠損マウスではTDAG51の発現が著明に減少するだけでなく、温熱ストレスによるFasの発現誘導も全く認めなかった。以上より、蛋白質変性を感知し細胞生死を制御する新しいHSF1-TDAG51-Fasの系路が明かとなった。
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