四肢形成領域および前後肢identityの決定機構

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13480242
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 田村 宏治 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (70261550)
• 研究分担者: 井出 宏之 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (70022704)
• キーワード: 胚芽 / 形態形成 / 鰭 / identity / Tbx / 体節 / 誘導 / 魚類

研究概要

側板中胚葉組織の領域分けについて、前肢領域と後肢領域の決定にその中軸側に位置する体節が重要な役割を持つことを明らかにした。すなわち、前肢領域の体節を後肢領域に移植すると後肢特異的調節因子Tbx4の発現が抑制され、代わって前肢特異的調節因子であるTbx5が誘導されてくる。このような体節の働きは前肢よりも頭部側にのみ存在していることがわかった。また、このような体節の作用が肢芽の基となる壁側側板中胚葉のみならず内臓中胚葉原基である臓側側板中胚葉にも影響を与える可能性を見出しており、解析を続けている。また、わき腹領域に過剰肢を誘導する活性を持つ細胞であるヒト胎児肺由来繊維芽細胞(MRC細胞)が後肢のみを誘導することを見出した(現在、この細胞が持つ活性と体節が持つ活性を比較することにより後肢の決定に関わる液性因子の探索を行っている)。また、わき腹の過剰肢形成と細胞死との関係を調べた。まだ予備的ではあるが、肢形成領域に比べわき腹では細胞死が顕著であること、さらに過剰肢形成によってこの細胞死が抑制されることを見出している。
前肢/後肢のidentityが脊椎動物の進化上いつ確立されたかを調べる目的で、軟骨魚類ガンギエイ胚からTbx5/4およびTbx4の上流調節因子であるPitx1の単離を行った。さらにこれらの遺伝子のガンギエイ発生過程における発現解析を行い、Tbx5が胸鰭原基にまたTbx4およびPitx1が腹鰭原基に特異的に発現することを見出した。これにより軟骨魚類においてTbxのみならずPitx1がすでに存在していることが明らかとなり、脊椎動物に鰭構造がもたらされた初期の段階で前肢/後肢のidentityがすでに確立されていた可能性が強く示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Saito, D., Yonei-Tamura, S., Kano, K., Ide, H., Tamura, K.: "Specification and determination of limb identity : evidence for inhibitory regulation on Tbx gene expression"Development. 129. 211-220 (2002)
• [文献書誌] Yajima, H., Hara, K., Ide, H., Tamura, K.: "Cell adhesiveness and affinity for limb pattern formation"International Journal of Developmental Biology. 46. 897-904 (2002)
• [文献書誌] Yokoyama, H., Tamura, K., Ide, H.: "Anteroposterior axis formation in Xenopus limb bud recombinant : A model of pattern formation during limb regeneration"Developmental Dynamics. 225. 277-288 (2002)
• [文献書誌] Tamura, K., Amano, T., Satoh, T, Saito, D., Yonei-Tamura, S., Yajima, H.: "Expression of rigf, a member of avian VEGF family, correlates with vascular patterning in the developing chick limb bud"Mechanisms of Development. 120. 120-209 (2002)