研究概要 |
以下の3つの項目に分けて研究を進めたので、それぞれの研究成果の概要をまとめる。 1、側/壁側側板中胚葉の領域化メカニズム 内臓を作る臓側側板と四肢などを形成する壁側側板は、それらが分離する以前から頭尾軸に沿った領域分けがなされており、その大まかな領域分けにしたがって内臓であれば胃や小腸(前側)と大腸や盲腸(後ろ側)四肢であれば前肢(前側)と後肢(後ろ側)の構造の違いを形成していることが示唆するデータを得た。さらにそれぞれの構造内の詳細な軸形成はそれぞれが分離した後に形成されている可能性が強い。 2、Tbx5/4発現を指標とした前後肢の誘導メカニズム 前肢/後肢の運命づけ・決定・分化に関して、運命づけられる時期と両者の分化時期(Tbx発現開始時期)はほぼ同時であるが、決定をされる時期が大きく異なっており、またその決定には必要の無いTbxの発現を抑制する力が大きくかかわっている、というモデルを提唱した(Saito et al.,2002)。その可能性を更に検証するために行った、発生段階およびレベルの異なる沿軸中胚葉(体節もしくは体節板)を後肢レベルの予定体節領域へ交換移植した実験から、首、前肢、脇腹レベルの沿軸中胚葉はTbx5を誘導し、Tbx4の発現を抑制する能力をもつことを示唆するデータを得た。 3、1および2を、軟骨魚類胚、硬骨魚類胚、両生類胚および哺乳類胚を用いて検証する 軟骨魚類胚からTbx5遺伝子断片がクローニングされたことは、現存する脊椎動物はすべてTbx5/bx4遺伝子に規定される前後肢のidentityをもっていることを意味する(Tamura et al.,2001)。この事実は、脊椎動物の四肢の起源と進化そしてその多様性を考える上で、非常に重要な知見をもたらした。
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