研究概要 |
HH, FGF等の分泌タンパク質とそれらの受容体分子及び下流の転写制御因子につらなる様々な因子からなる位置情報シグナル伝達系が、ハエからヒトに至る多くの多細胞真核生物の発生分化において基本的な役割を果たしているとの考えが広く認められている。さらに、ハエ変異の哺乳類遺伝子によるレスキュー実験の結果、ハエとヒトの発生分化における相同性が、単なる位置情報シグナル伝達系の相同性を超えているらしいことが示唆できるようになってきた。今年度の研究では、まず、ハエの肢での位置情報下流転写制御因子で区画化の中心となっているBarホメオボックス遺伝子により制御されていると思われる全ての発生分化関連遺伝子を網羅的に探索するためのDNAマイクロアレー法を開発した。蛹期の発生中のハエの肢の各セグメントを解剖学的に切り離し、そこからmRNAを単離増幅させ、ハエゲノム計画で得られた全遺伝子に対応するDNAマイクロアレーにハイブリダイズさせ、セグメント間で発現量が大きく異なる遺伝子、特にBarが特的に発現する分節4,5特異的な、Bar下流発生分化因子をコードする候補遺伝子を多数同定した。DNAマイクロアレーとは、別に、分節4,5の区画化遺伝子Barと末端分節pretarsusの区画化ホメオボックス遺伝子、aristalessとclawlessとの複雑な遺伝的相互作用を明らかし、更にAristalessとClawlessタンパクと制御領域DNAとの相互作用の分子機構や、Rasシグナリングの転写制御におけるこれらの分子の役割を明らかにするための重要なヒントを得た。
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