研究概要 |
RFRP1,RFRP3は同一の前駆ペプチドより由来すると考えられており、それぞれの特異抗体をもちいて脳における免疫染色を行うと、抗RFRP1抗体、抗RFRP3抗体の免疫反応は視床下部腹内核外周の神経細胞体において全て共存する。しかし、RFRP3のC末端の構造は、別種のRFアミド関連ペプチドであるNPFFとも一致している。NPFFに関する形態学的解析は1980年代よりなされてきたが、その報告中のNPFF含有神経細胞体分布領域は、われわれが見出したRFRP1,RFRP3免疫陽性神経細胞体の分布領域(視床下部腹内側核外周)を含むものであった。そこで今回RFRP、NPFF産生神経細胞の鑑別を行うため以下の実験を行った。現在用いている抗RFRP3、抗体および市販抗NPFF抗体を用いた抗体染色に先んじて、吸収試験をおこなったところ、抗RFRP3抗体はRFRP1、NPFFには反応しないが、市販抗NPFF抗体はRFRP3に交差反応を示すことが明らかとなった。さらにRFRP mRNA、NPFF mRANに対するin situ hybridizationを行ったところ、視床下部腹内側核外周にはRFRP mRNAのみが、室傍核、視索上核、孤束核、三叉神経脊髄路核にはNPFF mRANのみが発現していた。以上より、これまでに報告されたNPFF産生神経細胞の分布の中で、一部は近年発見されたRFRPとの混同があったことが明らかとなった。RFRP1,RFRP3含有神経線維は、終脳、間脳、中脳、橋、延髄において分布が認められ、その殆どで抗RFRP1抗体、抗RFRP3抗体の免疫反応は共存した。しかし、視床、脊髄の一部では抗RFRP3抗体反応性のみを示す神経線維が検出された。これはRFRP1,RFRP3は共に視床下部の同一の神経細胞で産生されながらも、RFRP3のみを特定の領域に輸送する専用の軸索の存在を示唆している。
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