アルツハイマー病(AD)の病因として、アミロイドβペプチド(Aβ)の凝集・蓄積が重視されている。本研究においてはAβの切り出しに関わるγセクレターゼの分子機構を解明し、特異的阻害法を見出すことにより、新規根本的治療法の創出を導くことを目的とした。培養細胞を用い、γセクレターゼの活性中心と考えられるプレセニリン(PS)、ならびにPS結合蛋白として同定されたnicastrin (NCT)、APH-1、PEN-2について、RNA interference法によるノックダウンならびに多重過剰発現を組み合わせて、γセクレターゼ複合体の形成・活性化機構を解析した。RNAiを用いた実験から、NCT、APH-1、PEN-2はいずれもγセクレターゼ複合体の形成と活性発揮に必須の結合蛋白であること、NCT、APH-1が複合体の安定化を担い、PEN-2は最終段階で活性化を担うことが分かった。またPSとNCT、APH-1、PEN-2の共発現によりγセクレターゼ活性が上昇することから、これら3者のcofactorがγセクレターゼの基本構成因子であることを明らかにした。γ-セクレターゼ阻害剤の系統的合成を行い、DAPTを基本骨格としてγセクレターゼ阻害能が数倍高い誘導体の合成に成功した。in vitro γセクレターゼアッセイ系を樹立し、NSAIDsのAβ42特異的阻害機構について解析し、sulindac sulfideがAβ42選択的γセな非競合的γセクレターゼ阻害剤であることを示した。
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