研究概要 |
アルツハイマー病の発症においてγ-セクレターゼはAPPの膜内配列を切断Aβペプチドの切り出しという重要過程を担うプロテアーゼである。γ-セクレターゼが、Presenilinを活性中心とし、Nicastrin(Nct)、Aph-1、Pen-2の4種の蛋白から構成される高分子量膜蛋白複合体であることを明らかにした。NSAIDSの一つであるsulindac sulfideがγ42-セクレターゼをin vitroで特異的に阻害することを見出した。バキュロウイルス発現系を用いて、4分子それぞれをコードするリコンビナントバキュロウイルスをSf9細胞に感染させ、活性型γ-セクレターゼ複合体を出芽ウイルス画分に効率的に再構成する方法を確立した。またγ-セクレターゼ阻害剤であるDAPTによる阻害機構のターゲット分子の同定を試み、DAPTに光親和性標識基であるベンゾフェノンと検出・精製のためのビオチン基を付加したDAP-BpBを作製し、HeLa細胞由来の可溶性膜画分を利用して光親和性標識を行い、DAP-BpBが活性型γ-セクレターゼ複合体に含まれるPS1 C末端フラグメントを特異的に認識することを示した。この標識はDAPTと類似した構造を持つジペプチド型阻害剤により競合阻害されたが、活性中心部位に相互作用すると考えられるL-685,458や基質結合部位に相互作用すると考えられるAibペプチドとは競合せず、DAPTを含んだジペプチド型阻害剤は、基質がγ-セクレターゼ複合体に結合した後に活性中心へ遷移する過程を特異的に阻害すること、その過程にPS1のC末端フラグメントが関与していることが示唆された。さらに新規γ-セクレターゼ阻害剤の効率的なin vitroスクリーニング方法の開発に着手した。
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