研究課題/領域番号 |
13480266
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 伸郎 京都大学, 医学研究科, 助教授 (10152729)
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研究分担者 |
杉浦 重樹 奈良県立医科大学, 総合研究施設部, 助教授 (40179130)
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キーワード | 細胞内カルシウム / カルシウム遊離 / カルシウム放出 / 大脳皮質 / カリウムチャネル / カルシュムチャネル / IP3受容体 |
研究概要 |
シナプス刺激によるポスト側の細胞内カルシウム上昇が大きければシナプス増強(LTP)が起こり、少量の上昇ではシナプス抑圧(LTD)が起こるという説が、カルシウムとシナプス可塑性との関係について言われている。しかし、これまでの私たちやその他の研究グルーブの研究に基づけば、単にカルシウムの量だけに依存しないメカニズムがあると考えざるを得ない。そこで、LTDが誘導される範囲で、シナプスの刺激周波数と細胞内カルシウム上昇量の関係を調べ、更に薬剤を用いて、細胞内のカルシウム動態を変化させることでLTDの誘導性がどのように変化するかを検討した。生後3週ごろのラットより海馬のスライスを作り、CA1にてfield EPSPを記録した。LTD誘導の刺激として、0.5Hz、1Hz、2Hzの3種類を与えた。通常の外液中では、1Hzの刺激でLTDが最大であったが、カルシウム上昇量は、周波数にほぼ比例して増えていた。細胞内カルシウムストアからカルシウムの放出を促すカフェインを含んだ外液中では、0.5Hzでも1Hzと同じ程度の抑制が見られるようになった。しかし、カルシウムの上昇量については、コントロールと差がなかった。細胞内からのカルシウム放出がLTD誘導を起こす役割を担っているということが示唆された。次に、細胞外からのカルシウム流入を阻害した。L-typeカルシウムチャネルを阻害すると、0.5HzでLTDが誘導され、カルシウム上昇は0.5Hz刺激にて減少した。カルシウム流入はLTD誘導を抑制していることが示唆された。一方、2Hz刺激では、誘導されるLTDの程度がカルシウム上昇に相関していた。シナプス可塑性とカルシウム濃度の関係においては、カルシウムソースに依存する機構とカルシウム濃度に依存する機構が存在し、シナプス可塑性の方向性が二重にコントロールされていることが示唆される。
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