研究課題
我々は、これまでに、マウスES細胞からの神経幹細胞の分化誘導および選択的培養・増殖法を確立し、さらにレチノイン酸によるES細胞由来神経系前駆細胞の分化程度や領域特異性の決定に関しての詳細が明らかにしてきた。そして、これらの結果は、我々の開発したin vitroでのES細胞からの神経系分化・誘導系が、実際の中枢神経系の発生をよく模倣していることを示唆していた。具体的には、神経幹細胞の時系列および領域特異的な分化能の変化が類似していた。そこで、特に、幹細胞の時系列特異的な分化能の変化を制御するメカニズムを解明するために、DNAマイクロアレイ解析(2万2千遺伝子)による時系列特異的な遺伝子発現プロファイリングを行った。マウスES細胞より胚様体(EB)形成を介して選択的に増殖させた1次neurosphereとそれを継代した2次neurosphereよりmRNAを抽出し解析を行ったところ、1次neurosphereで有意に発現の高い遺伝子を618個、2次neurosphereで有意に発現の高い遺伝子を840個同定した。また、これらの遺伝子のうち、マウス胎仔11日目と新生仔の側脳室周囲細胞の比較プロファイリングでも同様な発現変化が認められたものは、それぞれ199個および244個であった。これらは、細胞周期関連因子、転写因子、クロマチン再構成因子、分泌因子、細胞接着因子、シグナル伝達分子等、様々な種類の遺伝子を含んでおり、現在、特にepigeneticな遺伝子発現制御に関与すると思われる因子を中心に機能解析を進めている。一方、これまでの研究成果を生かし、カニクイザルおよびヒトES細胞より神経幹細胞を分化誘導し、霊長類神経発生をin vitroで再構成するシステムの開発を試み、培養条件の詳細に違いが見られたものの、マウスES細胞と同様の神経誘導および神経幹細胞の選択的培養が可能になった。
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