研究課題/領域番号 |
13480268
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研究機関 | 高知医科大学 |
研究代表者 |
椛 秀人 高知医科大学, 医学部, 教授 (50136371)
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研究分担者 |
谷口 睦男 高知医科大学, 医学部, 助手 (10304677)
奥谷 文乃 高知医科大学, 医学部, 助教授 (10194490)
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キーワード | 学習 / 嗅球 / 相反性相互シナプス / グルタミン酸受容体 / 長期増強 / ノルアドレナリン / CREB / タンパク質キナーゼ |
研究概要 |
交尾刺激を引き金として雌マウスに形成される雄フェロモンの記憶は、記憶学習研究の新しいパラダイムとして有用である。なぜなら、鋤鼻系の最初の中継部位である副嗅球に生ずるシナプスの可塑的変化と学習が直接に対応しているからである。交尾刺激により賦活されたノルアドレナリン神経の働きを引き金として、種々の情報分子が関わり、僧帽細胞から顆粒細胞への興奮性シナプスに形態変化が生じる。フェロモンの記憶に加えて、新生仔ラットにおける匂い学習も優れたモデル系であると考え、そのメカニズムを解析してきた。匂いと電撃を30分間1回対提示するだけで、この匂いに対する嫌悪学習が成立する。この匂い学習は、主嗅球の僧帽細胞と顆粒細胞の相反性シナプスが深く関わり、転写因子CREB(cyclic AMP response element binding protein)の発現とそのリン酸化を介して成立する。本研究では、これまでの成果を基盤として、匂い学習の形成・維持・消去機構、とりわけその分子メカニズムの解明を目指し、下記の成果を得た。 1.副嗅球のスライス標本を用いて、僧帽細胞から顆粒細胞への興奮性シナプス伝達に長期増強(LTP)が誘導される。このLTPはNMDA受容体依存性に成立し、ノルアドレナリン(NA)により促進された。1982年に記憶形成におけるNAの関与が証明されたのであるが、そのメカニズムは不明であった。本研究で我々は、LTPにおけるNAの作用メカニズムを明らかにした。すなわち、NAはα_2受容体を介してLTP誘導を促進した。 2.幼若ラットにおける匂い学習の成立にCREBの発現とそのリン酸化が関わる。このCREBのリン酸化へ導くタンパク質キナーゼ系としてMAPK/ERKを同定した。
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