研究概要 |
近年、培養細胞の研究から、抑制性神経伝達物質のGABA(ガンマアミノ酪酸)が発生過程で独自の作用を発揮して神経系の発達に関与するとみなされているが、生体での証明はない。本研究は13,14年度において、われわれが作成した脳内GABAが減少するGAD(グルタミン酸脱炭酸酵素)ノックアウトマウスを用いてこれらの点を明らかにする。13年度は以下の成果を得たので、14年度にこれを継続して完成させる。1.呼吸調節系の発達に対するGABAの関与。誕生前後のマウスにつき呼吸運動の記録と摘出延髄脳幹標本の呼吸ニューロン活動の記録を行い、GAD67欠損マウスでは発達が数日遅れていることを見いだした。2.GABA性ニューロンの発生の解析。GAD67のエクソン1にGFPをノックインし、GAD67の発現をGFPによって検出して、GABAニューロンの初期移動を追跡した。従来研究されているganglionic eminensから大脳皮質への移動を系統的に経時的に解析して知見を加えた。3.発生過程の非神経組織におけるGABAの発現と役割。GFPノックインマウスによりGAD67の発現を従来の方法より明確に示すことができた。毛根、歯髄、鼻粘膜で発現を見いだしたので、その意義を追求する。4.GAD67の異所性発現の神経発生に及ぼす影響。全ニューロンに発現するCAGのプロモターにGAD67遺伝子をつないで、中脳水道に注入したのち、エレクトロポレーションによって脳室壁の細胞にとりこませて、上丘・下丘の層構造、神経核の形成に及ぼす影響をしらべている。
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