前頭眼野は、サッケード発現に関与することが古くから知られている。最近、前頭眼野は、滑動性眼球運動や輻輳性眼球運動にも関与することが明らかとなった。さらにこの前頭眼野がサッケードの発現を抑制することが明らかとなった。 本研究は、サル前頭眼野におけるサッケードの発現を抑制する部位を同定し、その抑制の性質、すなわちサッケードの種々のパラメータに対する効果、サッケード以外の眼球運動に対する抑制効果の有無などを明らかにし、さらに其の部位が、眼球運動の発動を積極的に抑え、視覚対象物の像を中心窩に留める機構、すなわち固視(Fixation)機構に関与しているかを検討するために行われた。このため、慢性条件下で、サルに視覚誘導性サッケード、滑動性眼球運動を訓練し、前頭眼野のICMSを行い、サツケードを50μA以下で抑える抑制野の部位を同定した。比較的広いFEF(前頭眼野)から、刺激部位と同側へのサッケードの抑制が起こった。対側へのサッケードには全く抑制がない。それに対して、両側へのサッケードを抑制する部位が見いだされたが、その抑制野はarea 8の後部の限局した部位に存在した。この部位で、8方向の全方向へのサッケードを行わせ、抑制効果を見ると、全ての方向のサッケードがほぼ同じ位の強さで抑制されることが明らかとなった。さらに、刺激のパラメーターを変え、抑制効果を調べたところ刺激時間を延長すると、それに伴い抑制も延長され、刺激閾値は、同側、対側サッケードに対してもほとんど同一で、低いものでは10μAで十分抑制が起こった。次に、この抑制野から、ユニット記録を行い、種々の固視条件下、及び記憶誘導性サッケードタスク時の神経活動を記録解析した。この抑制野からは固視条件下で一定の発火を示す細胞が記録され、その活動はサッケードの開始と共に減少ないし消失した。現在これらの細胞の詳しい性質を解析している。
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