研究概要 |
(1)遺伝的背景の違いによるGalT-I KOマウスの致死性の変化 交雑系のGalT-I KOマウスは胎生期の発生には問題がないことをすでに報告したが,このマウスをC57BL/6やBALB/cに戻し交配したコンジェニック系統では、それぞれ出生直後あるいは胎生後期に致死となることがわかった。どちらの場合も致死となる数日前から,胎盤の成長が遅延していることが明らかとなり,特に,胎仔側と母体側を繋いでいる海綿状栄養膜細胞層の発達が著しく障害されており,胎仔側の迷宮層の血管形成阻害も観察された。ホモ欠損胎仔と正常胎盤とのキメラ解析を行って,胎生、致死の原因がこの胎盤の形成不全であることを証明する予定である。また,GalT-I遺伝子と連鎖して致死となる遺伝子を検索するために,二つのコンジェニック系統のF1を作製したところ,GalT-I欠損F1マウスは胎生期はもとより出生後も死亡することはなく,C57BL/6とBALB/cではGalT-Iに連鎖する遺伝子が異なる可能性が示唆された。今後,さらに遺伝学的な解析を進めていき,マウスの遺伝的背景によって,GalT-1欠損の表現型に影響を与えている遺伝子の検索を行っていく。 (2)GalT-II KOマウスの作製 GalTは遺伝子ファミリーを形成していることが最近明らかとなり,GalT-I遺伝子の機能を相補している第一の候補は他のGalT遺伝子である。Galt-Iと最も相同性が高く,哺乳類に進化してから分岐したと思われるGalT-II遺伝子のノックアウトマウスの作製を進めた。すでにGalT-IIの染色体DNAを含むファージクローンを単離していたので,本年度はN末側のエクソンとイントロンの構造を決定し,ターゲッティングベクターを構築した。今後,このベクターをES細胞に導入して,相同組換えESクローンを単離し,常法従ってGalT-II KOマウスを作製する。また,他のGalT遺伝子についても染色体DNAの単離とターゲティングベクターの構築を進めている。
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