研究概要 |
1)GalT-IIノックアウト(KO)マウスの作製 GalTは7つの遺伝子からなるファミリーを形成していることが明らかとなり,GalT-I遺伝子の機能を相補している第一の侯補は他のGalT遺伝子であると考えられる。そこでGalT-Iと最も相同性が高く,哺乳類に進化してから分岐したと思われるGalT-II遺伝子のKOマウスの作製を進めた。マウス129系統由来のGalT-II染色体DNAを用いてターゲティングベクターを構築した。次にPCRによる相同組換え体のスクリーニングの条件検討を行ったが,検出感度に問題があることがわかり,サザンハイブリダイゼーションでスクリーニングすることにした。ターゲティングベクターをES細胞に導入し,503個のネオマイシン耐性クローンについてサザンハイブリダイゼーションを行ったところ,4つが相同組換え体であることがわかった。このうち正常な核型を示したものについて,キメラマウスの作製を行った。今後,キメラマウスからヘテロマウスを経て,GalT-IIKOマウスの作製を行い,GalT-IIが生合成する糖鎖の機能を解析していく。 (2)GalT-IKOマウスにおける炎症反応の抑制 これまでの研究からGalT-IKOマウスでは,セレクチンのリガンド糖鎖の生合成が障害されていることを明らかにしてきたが,本年度はZymosanの投与による急性炎症反応やmBSAの投与による遅延型過敏症反応について検討を行った。GalT-IKOマウスはコントロールマウスと比較して,これらの炎症反応が有意に抑制されており,セレクチンのリガンド糖鎖の合成不全が原因であることがわかった。しかしこれらの炎症反応はセレクチンのKOマウスほど完全には抑えられなかったので,セレクチンのリガンド糖鎖の生合成には他のGalT遺伝子も関与していることが示唆された。
|