研究概要 |
β4GalT遺伝子群は、7つの遺伝子からなるファミリーを形成しており、細胞種や組織毎にガラクトース転移の役割分担があると考えられる。炎症反応において白血球と血管内皮細胞の接着に重要なセレクチンが結合するリガンド糖鎖の生合成におけるβ4GalT-Iの貢献度を明らかにするために、β4GalT-I KOマウスの解析を行った。セレクチンのリガンド糖鎖が主に発現しているコア2のO型糖鎖の生合成が、β4GalT-I KOマウスでは80%程度障害されており、実際に好中球や単球上のセレクチンのリガンド糖鎖の発現は減少していた。そのため、このマウスでは、急性期の皮膚炎症や接触過敏症反応、遅延型過敏症反応などが抑制されていた。以上の結果は、β4GalT-Iがセレクチンのリガンド糖鎖の生合成を担っており、β4GalT-I KOマウスではその生合成が障害されているために、各種の炎症反応が抑制されていることが明らかとなった(Asano et al., Blood,2003)。また、β4GalT-I KOマウスは皮膚創傷治癒が有意に遅延していた。特に、初期の炎症期における好中球やマクロファージの創傷部位への浸潤が障害されており、その後の創の閉鎖や肉芽組織内における血管新生,再上皮化などが遅延した。以上の結果は、セレクチンのリガンド糖鎖の生合成が障害されているために、炎症期における炎症性細胞の創傷部位への浸潤が抑制されて、その後の創傷治癒過程が遅延していることが示唆された(Mori et al., Am.J.Pathol.,2004)。β4GalT-Iの活性を相補している可能性が高いβ4GalT-II遺伝子のKOマウスの作成にも成功した。
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